最近ではあまりめずらしくなくなった子宮内膜症ですが、まだまだ解明されていないことがたくさんあります。
はっきりとした発症原因、完治するのかしないのか、再発するのかどうかなど未だ研究が続けられています。
その中でも統計によってある程度はっきりしている部分である「子宮内膜症と年齢」についてご紹介していきます。
子宮内膜症が発症しやすいと言われている年齢などは、既に発症している方、発症の疑いのある方のみならず、まだ発症していない方ご本人様や、ご家族にお子様やご姉妹などの女性がいらっしゃる方にとっても、気になる部分だと思います。
今回は子宮内膜症と年齢について、3つのポイントに分けて詳しくみていきましょう。
1.子宮内膜症が発症している年齢分布
子宮内膜症は、20歳代から40歳代までの幅広い年代で発症が確認されています。
最近は10代後半の若い世代にも発症が確認されていますが、圧倒的に20歳代以降閉経までの世代が多いです。
しかし子宮内膜症は、初潮後10代後半から閉経までの全ての年代で発症する可能性があります。
最近は食生活や生活様式の欧米化により、初潮の低年齢化が起きています。その為、子宮内膜症の10代後半での発症も少しずつ増えてきているといわれています。
また、日本産科婦人科学会によると、以下の事が平成27年の発表資料によって報告されています。
・日本での30歳代前後の150人に1人は子宮内膜症で病院を受診治療している。
・子宮内膜症全体の受療数は22.2万人。
・発症年齢のピーク30歳代後半から40歳代前半。
さらに、厚生労働省医道審議会医師臨床研修部会の平成25年4月の提出資料によると、20歳代から30歳代の女性の10%、月経痛のある女性の25%、不妊女性の50%に子宮内膜症があると記載されています。
2.子宮内膜症の症状と年齢
子宮内膜症の代表的な症状は月経痛です。かなり個人差があり、人にもよりますが、月経中は起き上がることもできず、ひたすら横になっているしかない状態になる方もいらっしゃいます。
また、月経時以外の腰痛や下腹部痛、排便時の痛みや性交痛がありますがこれらの症状も20歳代から30歳代にもっとも多く発症しているそうです。
40歳代以降の場合は、歳を重ねて女性ホルモンの分泌減少により痛みが治まってくる方がほとんどです。
出産を経て痛みが減少する方もいるそうです。
20歳代から30歳代というと、妊娠出産を希望する方が多い年代ですが、子宮内膜症を発症していると不妊も症状としてあらわれます。不妊で病院を受診したら子宮内膜症だった、という例も少なくありません。
子宮内膜症は、完治することはありません。
投薬、手術などどの治療法を使っても再発の頻度が高いです。卵巣の内膜症性嚢胞の場合は長い年月を経て閉経後でも癌化する可能性がありますので、長期間の経過観察が必要です。
3.子宮内膜症の悪性腫瘍化と年齢
子宮内膜症の中でも卵巣子宮内膜症性嚢胞は、「チョコレート嚢胞」とも呼ばれる卵巣内にできる子宮内膜症で不妊の原因になると言われています。
この卵巣内の子宮内膜症性嚢胞は、稀に悪性腫瘍すなわちガン化する事が報告されています。
数人の大学教授が集まって6400件弱の症例を17年にわたって追跡調査し研究した結果発表のレポートによると、卵巣子宮内膜症のガン化する年齢は閉経、出産回数、ピルの服用、喫煙などの背景因子に関してほとんど差異はなかったそうです。
発ガンに関係する一番の危険因子は、卵巣子宮内膜症の最大径、大きさです。
卵巣子宮内膜症がガン化する危険性の高い嚢胞の最大径は、20歳代30歳代だと10センチを超えるもの。40歳代50歳代は6センチを超えるもの。これらの年代での大きさの嚢胞は悪性化を念頭に置き、画像診断等で長期間の経過観察が必要となってきます。
45歳以上で閉経後の女性で10センチ以上の卵巣子宮内膜症性嚢胞を有している方の場合は、手術療法が安全だと書かれていました。
いかがでしたでしょうか?
子宮内膜症と年齢のポイントを解説させていただきました。
悪性腫瘍化などの記載もありましたが、子宮内膜症の方全員に当てはまるわけではありませんので、必要以上に怖がる必要はありません。
きちんと主治医と相談をし、適切な診療を受け、経過観察を続けていれば不安に思う必要はありません。少しでも不安に思うことがあれば、すぐに専門医に受診して相談しましょう。
参考レポート
『症例から学ぶ生殖医学 4)子宮内膜症/子宮腺筋症 卵巣チョコレート嚢胞と癌化』