子宮内膜にできるはずの細胞が、卵巣や腹膜など子宮以外の場所にできるのが子宮内膜症。その原因は経血が逆流することで起きるからだとも、そこにある細胞が子宮の内膜によく似た細胞に変化してしまうからだともいわれていますが、西洋医学的にははっきりわかっていません。
子宮内膜症の主な症状は、激しい月経痛や月経時以外の下腹部痛です。西洋医学で子宮内膜症を改善しようとすると、ホルモン剤で月経を一時的に止めることになりますから、この間は妊娠が望めません。また治療自体も子宮内膜症そのものを治すものではなく、子宮内膜症による症状を和らげるというレベルにとどまります。
一方、東洋医学では、それぞれの“体質”を見極めることで、西洋医学ではわからなかった原因を見つけることができます。西洋医学とは全く違う角度から体を見ることで、科学的な方法で改善できなかったことが、改善できる可能性を秘めているのが東洋医学なのです。
そもそも東洋医学の“体質”とは、どういうものなのでしょうか。それは、ざっくりいうと体の特徴のこと。ひとりひとりの顔かたちが違うように、体の特徴もひとりひとり違います。そうした体質を見極めるものさしとして、たとえば“八鋼弁証(はっこうべんしょう)”というものがあります。
これは表裏、寒熱、陰陽、虚実の8つの対立概念に分けて診断する方法。体の浅い部分なのか深い部分なのか、体の中に熱があるのか冷えているのか、体力があるのかないのか……、これらを分類して、ひとりひとりの体がどういう状態にあるのかを表します。
そのほか五臓六腑の障害を見つける“臓腑弁証(ぞうふべんしょう)”や、血のよくない原因を見つける“津液弁証(しんえきべんしょう)”といった方法もあります。
これは検査をして異常を見つけるものではなく、東洋医学的に体のバランスをみたときに、そこにアンバランスがあるかどうか、ということを見極めるということですね。
こういったものさしで体質をみていくと、子宮内膜症の人は、“腎虚(じんきょ)”と“?血(おけつ)”という状態の人が多い。
“腎虚”というのは、生殖機能にかかわる“腎”が弱くなっていることをさします。高齢になるほど生殖機能は衰えますが、年齢以外にも体に負担をかける生活を送ることで、腎が弱ってしまうことがあります。
“?血”というのは、血液がかたまったり、流れにくくなったり、どろどろになったりして滞る症状。本来あるべきでない場所で子宮内膜が増殖し、出血した血液の行き場のない子宮内膜症の症状そのものが、まさに“?血”の状態といえるでしょう。こうした“腎虚”や“?血”を改善することが、子宮内膜症の改善につながるといえるのです。
具体的には漢方と鍼灸で治療していきます。漢方も鍼灸も基本的な考え方は同じですが、漢方と鍼灸では得意分野が異なります。
漢方が得意なのは落ちている機能を高めたり、少ないものをふやしたりすること。鍼灸は気の流れなど流れをよくすることが得意です。
子宮内膜症にかぎっていえば、子宮内膜症によって落ちている卵巣機能を高めるのに漢方は効果的ですし、血の巡りや気の巡りをよくするために鍼灸治療を取り入れるメリットは大きいでしょう。
漢方と鍼灸を併用することで相乗効果は得られますが、漢方だけ、あるいは鍼灸だけ、
という場合もあります。
どう選ぶかは患者さんのご希望を聞きながら、決めていくことになります。