先日、病院で検査を受けてきたというTさんが当院を訪れました。Tさんはまだ20代で、これから病院治療を受けるべきかどうか迷っています。まずは検査だけのつもりで病院に行ったけれど、すぐに治療が始まってしまったことに戸惑っている様子でした。
「私たちはまずは升屋さんの漢方で、と思っていたけれど、とりあえず検査がしたかったので病院に行ったら、貧血と高プロラクチン症と診断されて服薬することになりました。それから排卵をちゃんとしていないということで、排卵誘発の注射と生理をおこさせる注射をしたんです。でも、このまま継続していいものかどうか……」
「Tさんの希望はどうですか? まだ病院の治療はしたくない気持ちですか?」
「とりあえず行ってしまったので、もう少し続けたほうがいいのか、どうしようかという複雑な心境で……」
「方法としては、漢方だけの治療、病院の治療と併用しながらなど、いろいろありますからね。薬を使えば生理が定期的にきて排卵も起こる。妊娠しやすさを考えれば病院の治療は可能性が広がりますが、長期間治療を続けることになるとさまざまな負担がかかります。漢方と併用することで時間的、経済的負担を軽くできるので、併用しながら治療をつづけるとか、薬や注射に抵抗があるなら治療をストップするという選択肢もあります。でもいまのお話しを伺うと、先生としては治療をしにきたのだろうと思って、当たり前のように治療を始めたのではないでしょうか」
「そう思います。でも今回は仕方ないけれど、今後も注射、注射となると苦痛なんです」
「その辺りの心境を先生に話したらどうでしょうか? 注射はしたくない、もう少し様子を見たい、でもまずは卵管造影はしてもらいたいと相談する。何回か通ううちに先生ともコミュニケーションがとれるようになりますから、再度希望を伝えてみたらどうでしょう」
「そうですね。でも夫の精液検査の結果もよくないということで、自然妊娠は難しいと言われてしまって……」
「精子数を見ると、それほど厳しい数字ではありませんよ。これぐらいあれば自然妊娠している人もたくさんいるし、運動率も悪い数ではないので、あまり悲観することはないですよ」
「でも自然妊娠は無理って言われたんです」
「男性の数値には波があるので、まずご夫婦の状態をよくしていくことが大事です。排卵させるとか生理を起こさせることが目的ではなく、受精できる力を持った卵と、着床できる内膜をつくっていくのが目的です。そのために漢方や生活改善をやってもらっているんですよ」
検査結果を聞いたときは泣いたり、不安定になったりしたというTさん。精神的なものは体に影響するので、ゆっくり過ごしてください、と最後につけくわえました。
Tさんのように病院の治療に迷いや不安があり、心が疲れてしまった方はたくさんおられます。そういった方々にご夫婦自身で最善の方法を見つけられるよう、いろいろな可能性をお話ししながら、「まずはご自分の妊娠力を信じれば大丈夫」と自信をつけてあげたい、いつもそう思っています。