不妊治療を始めると多くの場合、お医者さんに「○日~○日ごろに夫婦生活をしてください」といわれるタイミング法から入ります。そうすると治療を受けているご夫婦は、その指導された日にしか夫婦生活をしないということが多いよう。でも実はそれが妊娠のしにくさにつながっていることがあります。
つい先日のこと。不妊のご相談で30代の夫婦が見えました。
最近、病院に通い始め、先生からタイミング指導を受けているのだけど、だんなさんが途中で元気がなくなってしまう。先生に「この日」と指示された日に夫婦生活が持てなかったから、もうその周期での妊娠はあきらめていると話されます。
そこで私が「そんなことはないですよ。前でも後でもいいんです」とお話ししたら、「えっ、そうなんですか」って……。
それぐらい夫婦生活については誤解があるのですね。
日本人は真面目なので、この日にしなさいと言われたら、その日以外はしてはいけないのかと思う人もいますが、妊娠のためには夫婦生活の回数は多いにこしたことはありません。もちろん、ご主人の帰りが遅いとか、女性も仕事をしている人が多いので、お互いに時間がとれなくて、少なくなってしまうということがありますが、タイミングがとれるなら、どんどん回数をふやすのがいちばんなのです。
「受精のためには男性は禁欲したほうがいい」といわれることがありますが、これも全く意味のないこと。男性の場合、毎日新しい精子がつくられますから、それをどんどん使ったほうが、精子をつくる力も強くなりますし、妊娠する可能性も高くなります。
女性の場合も、夫婦生活という行為自体がホルモンを刺激してくれます。
たとえば女性にはオーガズムというものがありますが、オーガズムを感じることで、膣が子宮の奥のほうへ奥のほうへと動くため、子宮が縦になり、精子をどんどん吸い上げてくれるようなスポイドのような働きをするのです。
けれども、それがタイミング指導によって義務的になってしまうと、そういった動きもしなくなりますし、男性もプレッシャーがかかった状態だから、途中で元気がなくなったりします。
そうではなく、お互いに気持ちが盛り上がったところでする夫婦生活のほうがずっと受精しやすく、妊娠しやすいのです。
こちらのご夫婦にも「二人の気持ちが合えば、いつでもいいんですよ」、そうお話ししたら、とても納得されていました。
妊娠には治療よりも、何よりもまず充実した夫婦生活です。まずはお二人が知り合った頃どうだったかを思い出してみるのも良いかもしれませんね。