体の機能をコントロールする自律神経は“交感神経”と“副交感神経”から成り、この2つがバランスよく働くことで、私たちの体は健康状態を保っています。ところがストレスや緊張を感じて交感神経が優位になると、このバランスがくずれて、自律神経も乱れてきます。自律神経は生理や妊娠に大いに関係しているため、自律神経が乱れると妊娠しやすさにも大きな影響がでてくるのです。
先日、当院を訪れたOYさん(26才)。
結婚して1年。昨年8月に妊娠が判明するも、9月に流産し、その後妊娠の気配はないとのこと。10月には病院で「卵は育っているけれど排卵していない」といわれたそう。
早く授かりたい、体にいいことや妊娠しやすいことがあればやってみたい、というのがOYさんが当院を訪れたきっかけでした。
病院の血液検査の結果を見てみると、コレステロール値が低め。ご本人は低めのほうがいいと思っていらしたようですが、実はコレステロールというのはホルモンの原料なので、少ないとホルモンが作れなくなります。もちろん高すぎるのもよくありませんが、低いのもよくないのです。
体調を伺ってみると、疲れやすく、長時間立っていられない。特に下半身のむくみがひどく、暖房をつけていても常に足が寒くてしょうがない。精神的にも不安定で、イライラが多く、自分の感情を抑えられず、気がつくと爆発……。神経質というよりは、変なこだわりが強いかもしれないと自己分析されます。
気圧の変化に弱く、空気が冷たいところにいるだけで頭が痛くなってしまうから、冬は外に出たくない。ひどいと3日から1週間は便秘。トイレが近く、夜中に起きることもしょっちゅう。座り仕事で運動の習慣は全くないとのことでした。
ひととおりお話を聞くと、OYさんは自律神経が乱れやすい体質であることがわかります。
自律神経の乱れが不妊の一因になっているようでしたので、鍼灸治療を検討してもらうことになりました。
冷えやストレスなどの“気滞”をとるのが得意な鍼灸は、自律神経やホルモンをととのえるのに適した治療法。
一般的に治療を始めるとバランスがととのい、いい方向に上がっていきますが、上がったとしても何もしなければまた下がります。落ちる前に次の治療をすれば上がりつづけるので、バランスが乱れている方の中には週に2~3回という頻度の方もいます。OYさんには週1回の治療をおすすめし、合わせて運動や食事など生活改善も指導しました。
そうして11月に治療をスタートし、本日3回目の治療でしたが、卵は順調に育っているそう。病院からも「あと5日ぐらいで排卵だよ」といわれたそうで、とても喜んでおられました。今周期はご主人の帰りも早くてラッキーと、心身ともによい状態になっているようでした。
体質は持って生まれたものではなく、生活してできあがるものです。何を食べるか、ストレスをどうするか、それぞれによいバランスを保つ必要があり、そこに配慮することで、これから先、良くも悪くもなっていきます。
かなり自律神経のバランスが乱れたタイプのOYさんでしたが、定期的な鍼灸治療とストレスをためない生活改善が、自律神経の調整につながることを証明してくれました。