子宮内膜症はひとつの病気ではなく、何種類かの子宮内膜症群を総じて子宮内膜症と言うのをご存知でしょうか?発生する場所によって病変の性質や症状が変わるので、診断方法や治療のアプローチ方法も違います。現在、4種類の子宮内膜症群が発見されており、まだ発見されていない症状もあると言われています。今回は、4種類の子宮内膜症群とその他の関連疾患について紹介します。
典型的な子宮内膜症は腹膜子宮内膜症
腹膜子宮内膜症は、典型的な子宮内膜症で「腹膜病変」とも言われています。腹膜や臓器の表面に発生し、小さな病変がバラバラと散らばってでき、癒着しやすいと言われています。診断は腹腔鏡でお腹の中を確認しないとできません。激しい痛みを伴う活動性のある病変ですが、進行するにつれて線維化をして治癒していきます。年齢経過とともに新規発生は少なくなります。治療は、年齢や症状の進行度、妊娠希望の有無など患者のライフステージによりますが、薬物療法の他、腹腔鏡などの手術療法を行ないます。
卵巣がんの発症率があがる!?卵巣チョコレート嚢胞
卵巣の中にできる子宮内膜症です。病巣が卵巣の中に袋を作り、生理のたびに血液が溜まっていくことで大きくなっていきます。病巣がチョコレートのようにみえることから「卵巣チョコレート嚢胞」と言われています。卵巣チョコレート嚢胞は、骨盤内で癒着を形成し、不妊や疼痛の原因となります。超音波エコーやMRI検査などで確認をして診断をします。病巣が小さい場合は薬物療法を行なって経過をみていきますが、そうでない場合は腹腔鏡手術をします。また、患者の年齢が40歳以上もしくは嚢胞の直径が10cm以上の場合は、卵巣がんの合併率が上がるので子宮全摘出を視野にいれた手術を勧められます。
診断が難しい!?深部子宮内膜症
深部子宮内膜症(深部性病変)は、腹膜の入り組んだ場所にできるため、発見と手術がとても難しいとされています。代表的なのは、子宮の裏側と直腸の間のくぼみにあるダグラス窩にでき、子宮後壁と直腸の癒着を引き起こす「ダグラス窩閉塞」です。ダグラス窩閉塞は、激しい性交痛や排便痛の原因となります。他の病変の治療をしても痛みが収まらないという場合は、ダグラス窩などの子宮深部に病変が潜んでいる可能性があります。診断は内診や直腸診を行ないますが、熟練した医師でないと発見と手術が難しいと言われています。
体のさまざまなところにできる!?希少部位子宮内膜症
子宮内膜症は、肺、膀胱、尿管、腸管、会陰など、全身のさまざま部分でも発生します。症状は部位によって異なりますが、生理の時に症状が現れるのが特徴です。診断や治療は、発生する部位によって違います。
子宮筋腫と似ている子宮腺筋症
子宮筋腫との見分けが難しいと言われる子宮腺筋症は、子宮筋層に子宮内膜に似た組織ができます。子宮にこぶができる子宮筋腫に対して、子宮筋層全体に入り込んで広がっていくので、病変の部分が盛り上がったり、子宮全体が肥大したりします。生理のたびに増殖を繰り返し、激しい疼痛や月経過多などの症状を子宮内膜症と似た症状を引き起こしますが、発生の仕組みが違うので専門的には子宮内膜症ではありません。子宮内膜症や子宮筋腫などと併発することも多い病気です。診断は内診や超音波エコー、MRI検査などで行ないます。治療は、他の子宮内膜症と同じように、症状や進行度合い、患者のライフステージを考慮にいれて、薬物療法や手術療法を選択していきます。また、子宮内膜症と同じように、閉経まで根治は難しく、閉経を迎えると改善されていきます。
まとめ
体のさまざまな所にできる子宮内膜症群は、生理の時に辛い症状が現れるのが特徴です。病変が現れる場所によっては、発見や手術が難しく、がんなどの病気を引き起こすこともあります。子宮内膜症群や関連疾患は、生理がある間は根治が難しいと言われていますが、信頼できる医師に適切な診断と治療を行なってもらい、経過を見ていくことがとても大切と言えるでしょう。