妊娠しやすい体づくりの要素として欠かせないのが食。
体は食べ物の栄養からつくられているため、食をととのえることこそが不妊を改善するうえで大切になってきます。
東洋医学の面から食を考えたときに覚えておいてほしいのが、“一物全体(いちもつぜんたい)”と“身土不二(しんどふじ)”という原則。一物全体とは、植物なり動物なりを食料として食べるときに、なるべく丸ごと食べるということ。野菜なら葉っぱから根っこ、皮まで、魚なら頭からしっぽまで、できれば内臓までトータルで食べることで栄養バランスがとれるのです。
作物を食べることで体ができます。人には寿命がありますから、できあがった体は、やがて土にかえります。そうやって生物は循環しているので、体と土は別々にみるのではなく、大きな目で見れば同じもの、これが身土不二の考え方です。
身土不二の観点では、環境から適切に食べ物を取り入れることが基本となります。つまり、住んでいる土地にできたもの、そして旬のものを食べるということ。
その土地にできた作物というのは、その環境に適した作物なので、体にとって必要な栄養素が含まれているわけですね。
また、その季節にとれた旬のものを食べていれば、その土地の風土や気候に適応できるため、季節の変化にもついていくことができます。
暑い夏にとれる作物なら体の余分な熱をとる成分が含まれていますし、冬場ならあたためる成分が含まれています。ところが現代は夏に冬の野菜、冬に夏の野菜が食べられる時代。そうすると夏に体を暑くさせて、冬に体を冷やして、と体のバランスを乱すことにもつながるので、こうした身土不二の感覚は、ぜひ身につけてほしいですね。
春が近づいているいまは、肝臓の作用だけでなく代謝機能や自律神経をととのえる“肝(かん)”が変調をきたしやすい時期。肝が働くためには、卵や魚、豆製品など、たんぱく質をしっかりとることが大切です。
同時に春は芽吹き時といわれるように、エネルギーがさかんになるため、精神的なバランスを失ったり、自律神経が乱れたりしがち。タラノメやフキノトウ、菜の花など苦味のある野菜は、そうした過剰なエネルギーを消し去る役割があります。ぜひ積極的にとりいれたいですね。
食べるときは基本的に加熱しましょう。調理法は煮る、蒸すがおすすめで、油を使った揚げものや炒めものは、なるべく控えめに。油に高熱を加えると、体にとって害のあるものに変質してしまう恐れがあります。
そういったことは、昔なら誰もが知っていたこと。そんな昔ながらの知恵を、いま改めて見直してみることも食養生につながるでしょうね。